「ウォトカって何だろう」

 

川崎さんと西村さんの随筆にロシアでウォトカで酔っ払った話が出てきて面白く読ませていただきましたが、ウォトカって何だろうかと考えてみると、味は知ってはいても、どうもよく分らないのです。

 

とにかく知っているところまで書きますから、どなたか助けてください。もし誰にも分らなければ、ロシアに旅行される方が現地で聞いて来ていただくと有難いです。

 

ウォトカは蒸留酒の一種ですが、蒸留酒にはウイスキー、ブランデー、カルバドス、グラッパ、ジン、ラム、ショウチュウなども含まれます。西洋の蒸留酒は二種類に分けられ、第一は果物の汁にイーストを加えて発酵させ、さらに蒸留します。ブランデー、カルバドス、グラッパが属します。第二は穀類または芋をまず糖化させ、その糖を発酵によりアルコールにかえ、蒸留します。ウイスキー、ジン、ラム、ウォトカが属します。このときの糖化には、麦芽が必要です。(芋のゆでたのに麦芽をまぜておくと、終戦後よく食べた芋飴ができます。)

 

ウイスキーの造り方はかなりよく知られています。原料はビールと同じで、蒸留するまでの工程もほとんど同じです。ただ異なるのはホップを入れないことと、泡は出ないようにしておきます。蒸留したら火にあぶって内側を焦がした樽にいれるか、泥炭とまぜて焦げた臭いを付けながら、数年ねかせる。

 

ラムの原料は砂糖きびで、砂糖を絞った残りのかすを発酵させてから蒸留します。だからラムの匂いは黒砂糖の渋みが発酵て出来ると思ってよいのです。ジンの匂いは松の樹脂の匂いでもあります。これは穀類から発酵してできビール(ホップなし泡なしの)を蒸留するときに松の実を混ぜておくと、その中の松の香りが蒸留酒についてきます。

 

それではウォトカはどうかと言うと、ホップなし泡なしのビールを蒸留するところまではジンともウイスキーとも共通しているのです。しかし、どうすればあのウォトカ特有の匂いがつくのかが分らないところです。ただし、ウォトカはウイスキーと同じく麦からでもできるそうですが、ジャガイモも多く使われているそうですから、それが作り出す香りかもしれません。

 

さて、ついでなので焼酎のことを少しかいておきますと、西洋の蒸留酒と比べて蒸留する段階以降は同じなのですが、そこに至るまでに根本的な違いがあります。焼酎の素材は麦類、米、芋、その他のでんぷん、ならどれでもかまいません。澱粉の糖化には麹を混ぜて、その酵素により糖化します。それと同時にイーストによる発酵を平行しておこないます。麦芽の酵素による糖化は東洋では使わず、日本は高度に精製した麹ですが、中国では雑菌のまじった麹か、蜘蛛の巣カビ、紅カビなどの微生物の酵素を用います。沖縄では日本の本土とは異なる黒かび(風呂の壁などにつく真っ黒のカビと同じ)で泡盛をつくります。

 

なぜこのような知識があるかの種明かしをかいておきましよう。米国では焼酎が販売されていないのです。それで自分で作ってみたら、これはびっくり、日本で売っている焼酎の何倍もおいしいではありませんか。それ以来、高級なブランデーやウイスキーよりも、自家製の焼酎の方がおいしいと思うようになりました。昨年の暮れ、行きつけのイタリア出身の歯医者に一合ほど贈ったら、彼も気に入って、歯医者にゆくたびにこの次はいつ蒸留するのだ、とせがまれます。

 

日本の焼酎がなぜ自家製にかなわないかはまだ謎ですが、おそらく、日本の焼酎には安いアルコールがまぜてあるようです。米国ではこのように安いアルコールがまぜてある酒類には高額の税金がかかります。そのため魅力のない飲み物となり、売れなくなると思われます。 中村