我が追憶のハイデルベルク、そしてドイツ

 

(2002.12.17記)

第10話  ウィースバーデンのカジノ

 

石原東京都知事がお台場にカジノを開きたいとご執心のようだ。一方、昨今政府

でも「構造改革特区担当大臣」を置き国会でカジノ設置の是非が議論されている。

担当の鴻池大臣が「自分はカジノへ行ったことがないのだが・・・」と述懐されて

いる。ドイツは各地にカジノがあるが、ここで紹介するのはハイデルベルク近隣の

ウィースバーデンのそれ。フランクフルト空港から西へ約30キロ、時間距離にし

て約30分のところに位置する高級保養地のカジノである。

ウィースバーデンはライン下りのスタート地点のマインツに隣接していて、ハイ

デルベルクとは三角形の位置関係になる。アクセスはフランクフルト空港から近く

タクシーでもよいが、電車でも、またマインツから船でライン河を横切ることでも

可能である。ここの温泉とカジノにはヨーロッパの富裕層の紳士淑女たちが集まっ

てくる。温泉とカジノと聞けば初耳の人は日本の温泉地から連想し享楽的イメージ

を抱くかも知れないが、国際会議も開催できる格調高いリゾート地なのである。

私はラスベガスへは行ったことがないので、知らないことを想像して云うことに

なるが、ラスベガスとウィースバーデンとはまるで違うように思う。ラスベガスは

マフィアが支配していて彼等に治安を委ねている、ホテルやカジノの従業員が観光

客に不正を働くとマフィアが射殺してしまうから治安が保たれるのだと聞く。これ

に対しドイツの保養地、殊にウィースバーデンには主にヨーロッパの上流階級の人

々が訪れ、本来的に治安もよろしい。

「クアハウス」をご存知だろうか。クアハウスはウィースバーデン市の中心をな

す、市の最も重要な建物である。別の温泉保養地であるバーデン・バーデン市の場

合でもそうである。カジノもレストランも浴場もクアハウスの中に施設の一つとし

て存在する。話は飛ぶが、日本でも旧厚生省がドイツ語のクアハウスの名前を模倣

して、「日本クアハウス協会」を設立した。日本版クアハウス37施設を指定して

いる。長年住み慣れた新潟県の糸魚川市近傍に実例があって実態を知っているが、

名前だけ似ていてまるで別物である。既設の温泉旅館やホテルに対し、設備や温泉

療法士などのスタッフの配置について、ある種の認定基準で「クアハウス」の名称

を認可するのである。古来、ドイツに厳然と存在するする「クアハウス」の名称を

使うのは、羊頭狗肉というか、換骨奪胎というか卑しい根性ではある。退職官僚の

天下り先としての(財)日本健康開発財団を設置するのが本当の目的ではないかと

邪推したくもなる。

 さてカジノであるが、僅かな入場料を支払って入ると絢爛豪華なシャンデリアで

照明されたホールにルーレット場が開かれ、バーなども併置されている。かって私

がウィースバーデンのカジノに入場したのは大晦日であったから特別だったかもし

れない。従業員も客も盛装している。タキシードを着たウエイターが客に「バロン

(男爵)」と呼びかけている。1月1日へ越年するタイミングに合わせてホールの

全員にシャンペンが配られた。これまた別のバーデン・バーデンのカジノの場合も

同様であった。

 私自身は賭け事に好奇心も適性もほとんど具わっていない。カジノに入場した際

にはルーレットにチマチマと小額の賭けで参加したことがあるにはあるが、ここに

得々と紹介する程の知識も経験もないのでこれ以上は書かないでおこう。寧ろ時々

ドンと多額のチップを置いて勝負するリッチな客とディーラーの駆け引きを飽かず

に観察しているのが面白かった。またウィースバーデンやバーデンバーデンのカジ

ノを訪れる機会があれば賭ける目的のためではなく入場し、上等の雰囲気に浸りた

いと思う。

以上

                    (第10話 おわり)

 

後書

(1)高級保養地だけに、ホテルも格調高い高級ホテルがそろっている。

私はHotel Schwarzer Bockに数回宿泊したが、レストランではジャケット

とネクタイ着用が必須で、ロビーや客室には什器、調度品や絵画は一流品が

そろっていた。

(2)また別のカジノつきの温泉保養地であるバーデン・バーデンはフランス国境

   を挟んであのアルザスロレーヌの中心都市であるストラスブール市と隣り合

っている。「宿泊はドイツで、食事はフランスで」などの遊び心も可能。