ソウル・W杯宴の後(3)

-本で勉強した韓国事情-

 

現在の韓国社会に対して、批判的な自分に気付く

ソウルの街で、食事・文化財・買い物を楽しみながら、 W杯での韓国の活躍を考えているうちに、韓国チームの強さの最も重要な要因は、ナショナリズムではないかと思われてきました。そう思うに従い、次第に韓国批判に傾いている自分に気付きました。どうしてナショナリズムが強いのでしょうか。もっと韓国を知りたくなり、韓国あるいは日韓関連の本を集めて読んでみました。

 

訪韓を機会に、韓国関連書を読む。日本は情報が溢れる言論の自由な国です

W杯の機会に気運が高まっていたせいか、実にたくさんの本が出版されています。韓国人による歴史、日本人による反省、韓国人による現在の日本社会批判、韓国人自身による韓国の社会体制および韓国人の歴史認識批判、韓国人が書いて韓国内で発禁になった中立的歴史認識と主張する書、日韓の庶民レベルの交流などの様々な立場の本が溢れています。

 

民主化されてきたといえ、まだ韓国では政治的理由で発禁になる本があります。日本文化の解禁が進んでいるとはいえ、まだ完全ではありません。中国では、最近国内でも体制に批判的な本も出ているようですが、基本的には情報統制がなされています。北朝鮮では、完全に情報がコントロールされ、ラジオを買うのも登録制になっており、チューナーはハンダ付けされているそうです。

 

日本はあらゆる情報が溢れる言論の自由な国であることを改めて感じました。

以下、幾つか印象に残った物を紹介します。

 

ソウルで買った文化遺産の説明書を読んで-私にとって心地良いものではありません-

朝鮮王朝の宮殿を訪れた時、文化遺産の説明書を買いました。正宮の景福宮の個所には、壬辰倭乱(文禄・慶長の役)の兵火で全焼、1895年の明成皇后(ミン妃)が日本人暴徒により殺害、日帝(日本統治)時代にほとんどの殿閣が解体と、日本人にとって肩身の狭いことが書かれています。

 

もっと肩身が狭くなるのが、独立門・刑務所歴史館らしいですが、今回は訪問の機会がありませんでした。刑務所は日本統治時代の政治犯の収容所であり、独立門は日清戦争後、韓国が清朝を宗主国とする立場から独立し、大韓帝国になった記念に立てられたものです。日本が勝利した日清戦争により独立するという、韓国の複雑な歴史の一面を示しています。

 

壬辰倭乱に戻ります。辞書によると〈倭〉は中国・朝鮮から日本を呼ぶ古代の呼称とあります。『ギ史倭人伝』の解説によりますと、〈倭〉というのは雅でないので、唐代以降、我々の先祖は自らを〈日本〉と呼ぶようになったそうです。中国でも唐代以降は、〈日本〉と呼ぶようになったとも書いてあります。最近、文芸春秋社から出た『美しい日本語』には、〈倭〉は矮小に通じ、蔑称と書いてあります。朝鮮では日本に対して、ずっと後の16世紀末まで、この蔑称を使っていたことになります。さらに、日清戦争・甲午農民戦争(東学党の乱)の時でも、〈倭〉の蔑称を用いています。

 

ちょっと脱線しますが、『ギ史倭人伝』には、この他に〈卑称呼〉〈邪馬台国〉〈狗奴国〉〈狗邪韓国〉など雅でない漢字を使った蔑称のような言葉がたくさん出てきます。昔から外交問題には呼称が重要な意味を持っていたのでしょう。

 

市立図書館に多い韓国史入門は-私の認識と微妙に違います-

千葉の市立図書館に行くと、日本統治時代の問題点を書いた本はたくさんあります。日本統治を少しでも正当化する物とか韓国の現体制を批判する物はありません。日本統治時代の問題を書いた本で身近なものは、最近出た岩波新書の高崎宗司『植民地朝鮮の日本人』があります。

 

ここでは、日本統治より前の日本・朝鮮の紛争史を韓国の学者がどう扱っているか、手近な金両基監修『図説韓国の歴史』(河出書房)で見てみました。日本で教えている韓国人学者が日本人向けに書いたものです。その中から年表風に取り出してみました。

 

400年、高句麗、南部に出兵し、倭を討つ

405年、百済の王仁、日本に渡り漢字を伝える

662年、唐・新羅連合軍、百済救援のための日本軍を白村江で撃破

 

この本では、「三国時代は、高句麗・新羅・百済の争いに、百済支援で日本が関与していたが、高句麗や唐・新羅連合が日本を撃破した」という点に重点を置いています。一方、最近話題の『新しい歴史教科書』では、「日本の支援で、百済は長期間にわたり安定していたが、最後に敗れた」というように、日本の支援により安定化した点に重点が置かれています。

 

いずれにしろ150年以上にわたって、百済(任那も)に日本人がいたことになります。この場合は、侵略とは言われていません。朝鮮半島では、北から中国、南から日本の影響を何回も受けていますが、その最初の例です。漢字を教えてやったのに、恩を忘れているという非難をよく聞きますが、この時代のことです。また、多くの亡命者が日本に渡り、日本の古代文化形成に貢献しています。

 

1259年、高麗、元に降伏

1274年、元、高麗を基地に第一次日本侵略(文永の役)

1281年、元の第二次日本侵略(弘安の役)

 

この本では文永・弘安の役について、「高麗は日本への遠征を極力回避しようとしたが、元に強制された」と平和主義の弱い高麗が書かれています。

 

日本の教科書では、「元・高麗連合軍が攻めてきた。台風と鎌倉武士の働きにより、本土の水際で食い止めたが、対馬・壱岐が犠牲になった」と書いている物が多いようです。。

 

1350年、倭寇の侵入、激化

1510年、三浦(釜山、熊川、蔚山)の日本人武力騒乱

 

この本では、倭寇の問題が大きな政治問題として取り上げられています。警察力で対抗するのではなく、外交努力で解決しようとしています。この時期には、通信使が両国間を往来しています。

 

日本の教科書では、元寇から文禄・慶長の役までの300年間、半島との関係ではあまり重要な事件が書かれていません。これはちょうど、現代において中国からの密入国者の犯罪が、日本では大きな社会問題になっているのに対して、中国側はさして大きな問題としてないのと同じでしょう。

 

1592年、壬辰倭乱(文禄の役)

1597年、丁酉倭乱(慶長の役)

 

この本では、「日本軍が不意をついて、釜山に上陸し、中国国境まで侵略したが、名将・李舜臣の水軍の活躍と義兵部隊の反撃により撃退した」と、名将と民衆の活躍を強調しています。日本の教科書で書かれている、「明の援軍のことと秀吉の死による撤退のこと」は書かれていません。宗主国・明の援軍のことは書きたくなかったのでしょう。

 

武家社会の日本では、幸運もあり、元寇を水際で食い止められました。一方、文官支配の朝鮮では、防衛力が弱く、日本軍に内部まで侵略されたのではないでしょうか。この戦いでは、多くの半島人が日本に拉致されて、日本に製陶などの技術を伝えています。私の故郷・土佐には、土佐固有の固い豆腐・カツオのタタキに使うニンニク食・ケンピと呼ばれる土佐の郷土菓子が伝えられています。

 

1894年、甲午農民戦争(東学党の乱)はじまる。清軍牙山上陸。日本軍、王宮占領。日清戦争はじまる。

1895年、日清下関条約。明成皇后(ミン妃)殺害事件。

1876年の日韓修好条規締結・釜山開港から1910年の日韓併合までの35年間の歴史については、日本の教科書と大きく重点の置き方が違っています。

 

この本では、この間を日本の朝鮮支配確立の過程として捉え、それに対する農民の抵抗の歴史としても書いています。日露戦争をその過程の完成としています。ここでは、宗主国・清の問題や北からのロシアの脅威には触れられていません。もちろん、清・ロシアの圧力に対して日本が脅威を感じており、防衛策を考える必要があったことにも、触れられていません。甲午農民戦争(東学党の乱)やミン妃殺害事件での日本の残虐行為が強調されています。18世紀から続いている朝鮮支配層の腐敗とそれに対する農民の反乱の記述は、対日問題の陰に隠れています。ミン妃殺害事件の10年あまり前の、農民による日本公使館襲撃および公使殺害事件についても述べられていません。

 

日本の教科書では、清およびロシアの2大国の脅威から、日本を防衛するため、日清戦争と日露戦争が起こったと説明されています。前述の農民による日本公使館襲撃公使殺害事件もミン妃殺害事件にも、少し触れる程度に留まっています。

 

韓国内の歴史教育の難しさが感じられます

13世紀からの朝鮮史を辿ると、元による占領、明・清を宗主国として朝貢する立場、日本による支配と8世紀にわたる大国、隣国に支配された苦しい朝鮮の立場が浮き彫りなります。こんなに、隣国から支配を受けたにも拘わらず、韓国人の99%以上は韓民族です。少年たちに韓民族の誇りを教え、団結させるためには歴史教育が重要でしょう。そのため、韓民族の優れて業績に重点を置いた歴史教育になるのでしょう。その結果どうしても、ナショナリズムの傾向が出てくるのではないでしょうか。

 

この本では、18世紀の朝鮮王朝が多くの矛盾を抱え、農民蜂起に悩んでいた時期でも、日本・中国に比べて文化面では、高い成果が得られていると強調されています。寡聞にして、その内容は分りませんが、日本で解体新書が出され、関孝和、平賀源内、近松門座衛門が活躍し、庶民の寺子屋教育が盛んだった時代です。一方、伊藤博文が朝鮮の官僚に「あなたがたは、何故国民の教育をこんなに疎かにしたのですか」と言ったことも伝えられています。

 

NHK人間講座『大好きな韓国』-韓国現代社会の矛盾点の記載-

W杯を機に、韓国事情の紹介が多く行われるようになりました。NHKでも講師・四方田犬彦『大好きな韓国』として、人間講座で取り上げられました。大変面白かったので、少し紹介します。講師は韓国で教鞭を取ったことのある人で、題名からも判るように全体として、韓国に好意的に話されています。この中から、徴兵制・映画・本に関することを紹介しましょう。

 

韓国の徴兵制は有名です。最初は日本陸軍の内務班制度が継承され、その気合いの入れ方は厳しいものであったようです。この軍隊生活を所定期間過ごすと、韓国の男はきりりと締まってくるそうです。悪名高い帝国陸軍のしごきが、韓国に伝承されていたとは、興味をそそります。きりりとした男を育てる徴兵制度が韓国社会では歓迎されているのでしょうか。そうでもなさそうです。韓国の特権階級は八方手を尽くして、子弟の徴兵逃れを画策していることが、よく新聞に報道されています。サッカーが強くなるためには、徴兵制度は都合がいいのでしょうか。Jリーグで活躍した韓国人選手が書いていましたが、大切な技術習得の時期に、軍隊生活することはサッカー選手にとっては、マイナスだそうです。そのため有力選手になって、徴兵逃れの特権を得ることが目標になるそうです。

 

韓国では日本文化が解禁になる前、40年間ほど、日本映画やアニメのコピー・剽窃が盛んに行われていたそうです。一般国民が、韓国人のオリジナルと思っていたものが、日本文化の解禁により、コピーだったことを知るようになるでしょう。しかし最近は変化が出てきました。優れた韓国映画の進出が、よく伝えられてきます。コピーとか海賊版と聞くと、「昔あったなあ」と思う日本の知識人も多いでしょう。本棚を探してみると、昔使った海賊版の本が出てきたりして。

 

韓国には、反日小説というジャンルがあるそうです。荒唐無稽なものが多いのですが、いつもベストセラーになっているそうです。1992年、従軍慰安婦問題が提起された頃、KBS放送の女性・東京特派員だった田麗玉が書いた『日本はない』も爆発的ベストセラーになったことがあるそうです。日本でも『悲しい日本人』(たま出版)として、翻訳出版されているようですが、内容は女性週刊誌だけを情報源にしたもののようです。ともかくも、何か日本の悪口を書くと売れる風潮があるらしい。

 

教育やジャーナリズムによって作られたのでしょうが、反日感情は私が予想した以上に強いとの印象を受けました。

 

韓国人による韓国の体制批判書-市立図書館にない本-

韓国の現体制や歴史認識を批判した本は、千葉の市立図書館には置いてありません。この種の本を置くと、都合が悪いのでしょうか。この種の裏情報に詳しい本は光文社のカッパ・ブックスとかカッパ・ビジネスにありますので、探してみました。ポクテヒョク、加瀬英明著『醜い韓国人(歴史検証編)-これは本当のことではないのか-』、チェケイホ著『これでは韓国は潰れる-恐るべき腐敗の実態-』などの本が見付かりました。ともに韓国における歴史認識・歴史教育批判や現体制批判の書です。韓国人自身が書いていることに興味が引かれます。この種の本は、韓国国内よりも日本での方が出し易いのでしょうか。チェケイホの本によると、韓国には親日派として批判の対象になっている人を挙げている、『親日(派)人名辞典』という本があるそうです。その中には、〈漢江の奇跡〉を推進した朴大統領も日韓基本条約に調印したことによって、挙げられているそうです。

 

カッパの本には、韓国だけではなく、日本・アメリカ・中国についても、同様な裏話的な話がたくさん載った『醜い○○人』といった本が出されています。どこまで本当なのか、判断能力はありませんが。小学館の雑誌『SAPIO』にも、韓国や中国の内情を書いた記事がよく紹介されます。どこの国にも、隠して置きたいことが多くあるのでしょうか。

 

話題の書、キム・ワンソプ『親日派のための弁明』とその書評

最近、話題になっている本に韓国新世代の気鋭の評論家キム・ワンソプの書いた『親日派のてめの弁明』があります。著者は光州民主化運動に参加し、のちに〈国家偉功者〉として顕彰された人です。この本の主張は「朝鮮王朝末期の歴史を公平な立場から検証し、抑圧的旧体制の清算と朝鮮の近代化は日本の支援なくしては有り得なかった」と日本統治のプラスの一面を評価し、韓国で行われている反日歴史認識は間違っているとしたものです。韓国では青少年に悪影響を与えるということで、事実上発禁処分になった本です。そして著者はミン妃の末裔から「名誉毀損」と「外患扇動」で告訴され、逮捕されたことがあります。

 

中立的立場から書かれた革命の書と言われており、私もそう思いました。韓国人自身によって書かれた本であることも価値を増しています。先日、朝日新聞と日経新聞に書評が出ましたが、評価は対立していました。

黛まどかさんの韓国俳句旅行-親切な韓国人たち-

どうもあまり良い話がありません。その中で、最近『文芸春秋』に出ていた俳人の黛まどかさんの話は心暖まるものでした。女二人で釜山からソウルまで、歩いて旅した時のエッセイです。途中であった田舎の人たちはみな親切で、丁寧に道や宿を教えてくれたり、食事をご馳走して頂いたと感動的に書いていました。個人個人では、親切な人も多くいるのでしょう。

 

大久保駅で、自らの命を犠牲にして日本人を救った若者のことも忘れられないでしょう。

 

ところで、日本は欧米人にどう思われているのだろうか

黛さんのような話もありますが、総じて韓国は付き合い難そうだという印象が拭えません。根深い反日感情は一朝一夕ではなくなりそうもありません。大きい植民地支配の歴史のつけがあります。

 

しかし、それだけではなさそうです。前にも述べましたが、韓国人の反日・反北朝鮮は判るとしても、反米的・反中国的な一面があるのは、理解し難いことです。これを纏めて排他的な国民性と言っている人もいます。排他的な性格は、韓国国内でも慶尚道と全羅道の対立がよく取り上げられます。

 

韓国のことを考えているうちに、日本が外国からどう思われているか気になり出しました。日本も他国民には馴染みのない仮名を使っています。しかも、カタカナと平仮名の二つを。我々日本人にとっては美しい漢字仮名混じり文も、外国人にとっては煩雑でとっつき難いでしょう。先進国の中では一国だけ、欧米諸国と違った思考方法で、付き合い難い相手かもしれません。サミュエル・ハンチントンは『文明の衝突』の中で、日本を独立した一つの文化圏として扱っています(ちなみに、韓国は中華文化圏に分類しています)。他の文化圏と違って、日本は一国で一文化圏を構成しており、孤立する可能性も指摘しています。他人の振りを見て、我が振りをもっと考える必要があります。

 

近くて近い国に

たくさん本を読んでみました。反日がちらつく韓国人の本と懺悔が目立つ日本人の本が多いようです。その中で、韓国批判が韓国人から出てきているのが、新しい動きでしょう。どうやったら友好が促進されるかを書いた本は、少数派です。

 

「W杯で日韓友好」の記事に対しても、「その嘘と偽善」という言葉が付け加えられます。協同開催の韓国が4強に入ったことを、心から祝福した日本人がどれだけいたでしょうか。あるスポーツ新聞に「いいな、いいな韓国4強」という見出しを見ました。「うらやましい」というのが本音でしょう。日本が負けた時、釜山の一部で盛り上がったという記事もありました。それでも、協同開催は大きな意義があったと思います。

 

そうです、NHKでハングル語講座を勉強し、片言で買い物をまけて貰いましょう。日本人は、もっともっと韓国に行って、美味しい韓国料理を食べ、買い物をし、文化財を見てまわりましょう。そして、韓国には日本文化の解禁を一層進めて貰いましょう。そういう付き合いが、一番の友好促進になるでしょう。また、行きたくなりました。